令和八年 歌会始
宮内庁資料より(皇族・召人・選者・選歌・佳作)
皇族殿下のお歌
天空にかがやく明星眺めつつ新たなる年の平安祈る
メダル掛け笑顔明るき選手らに手話で伝へる祝ひのことば
夜明け前一番鶏の鳴く声にアンルーナイの一日始まる
雨降れば部屋で工作紙芝居「あそびのひろば」は明るい広場
日本語を学ぶラオスの子どもらの明るき声は教室に満つ
ブラジルと日本で会つた子どもらの明るい未来幸せ願ふ
薄明かり黄昏とんぼは橋のうへ青くつきりと俊敏に飛ぶ
夕暮れて富士登山する人多く列なす明りうごきゆく見ゆ
江戸川に打ち上げられし満開の花火明るし笑顔眩しき
祖父宮の語りたまひし異国の砂の文明間近に迫る
佐渡島ほのぼの白く明けゆきて餌場に朱鷺の舞ひ降りきたり
参道を明るく照らす望の月見返ればはるか茜さす富士
召人
杣山明るむ天に杣人の声ひびきたり「一本寝るぞ」
選者
あな尊茜に雲は染まりをり明日船出を言祝ぐがごと
うるほひを含む大空の明るさがもう移ろひの季節と告げる
また俺を置いていくのか明晰夢と知りつつ言へばふつと笑ひぬ
東京に日出新聞とふありて号外も出す明治なりける
明け方のすべての音を引き連れて今し列車は鉄橋わたる
選歌
さざんくわの幹しらじらと立ちてをりきぞの夜ありし月の明かりに
大地震にたふれし明日檜の年輪を百までかぞふ製材前に
訪ふたびに明日は行くと言ひし子の席空きしまま授業終へたり
夜明け前この世の息を吸ひ初めしみどり児か腕に子は父となる
スクリーンに明朝体の文字並びチョークの音のしない教室
停電の長びく夜に寡黙なる父が星座に明るきを知る
演劇部照明係の娘が照らす舞台のベンチをカメラに収む
静かなり一夜で変はる北の町障子戸越しの雪明りかな
せがまれし地雷処理車の説明にながくなるよと前置きをせり
真つ青な栞紐あり文明は川より生まれ出づるをおもふ
明礬の再結晶の実験は君への恋を形にしてる
佳作
雪山の朝の北岳間の岳農鳥岳の放つ明るさ
退院にあらず転医の道すがら「空がきれい」と妻は明るし
茜から藍へ移れるつかのまの波照間島に明けのしづけさ
降るやうな星空の下ひたすらに夜明けを待ちし三・一一
明太子パスタをゆつくり卷きながら職退く思ひなほ揺らぎつつ
大屋根に上りて見遣る万博は国々の名の灯りて明かし
赤ちゃんが泣くと周りの乗客はやさしい透明人間になる
祈りとは夜明けをひとり待つことにどこか似てゐてあなたを思ふ
七台のクレーン車並ぶ渋谷駅今日と明日の間違ひ探し
天井の照明の位置目印に背泳ぎ選手は速さを競ふ
点灯夫街に明かりをともしてた明治時代の仕事を学ぶ
数学の先生と目が合つたとき明暗わかるテストの点数
「せんぱい!」と明るく手を振る後輩にはにかんでしまふ春の放課後
八〇年前ずつと小さい女の子この子に明日は来なかつたんだ